4回目の5月6日

目覚めると、また「5月6日」だった。
もはや驚きも感動もなかった。
安見手はベッドから起き上がることすらせず、天井を見つめたまま、しばらくぼーっとしていた。
「……さて、今日は何もしないか」
彼はその日、一歩も外に出なかった。
コンビニ弁当と酒を買い溜めし、録画していたバラエティを垂れ流しながら、ひたすらダラダラと時間を潰した。
ソファの上で寝落ちして、目が覚めたらまたうたた寝。
二度寝、三度寝、意味のないネットサーフィン。
“最高に怠惰な一日”──それこそが、安見手にとって理想の祝日だった。
夜。
部屋の照明を消し、枕元の“エターナル・トゥデイ”に手を置く。
「……明日から、また仕事か……」
彼はそう呟いて、天井を見つめた。
カレンダーを見れば、今日も「5月6日」。
明日にはついに「5月7日」を迎え、仕事が始まってしまう。
「……でも、もう一回くらいなら、大丈夫だよな?」
そう思った瞬間、頭の奥で声が響いた。
──「あと1回ですよ。くれぐれも」
温泉での、あの静かな忠告。
笑顔の奥にあった、妙な“本気”の眼差し。
……それが脳裏をよぎったが、安見手はすぐに打ち消した。
「大げさだよ、きっと。夢だろ? ダメ元でチャレンジだ……」
言い訳のように呟きながら、
彼はそっと、枕に頭を乗せた。
そして、眠った。