望の淵 #01 永遠のGW

4回目の5月6日

目覚めると、また「5月6日」だった。

もはや驚きも感動もなかった。

安見手はベッドから起き上がることすらせず、天井を見つめたまま、しばらくぼーっとしていた。

「……さて、今日は何もしないか」

彼はその日、一歩も外に出なかった。

コンビニ弁当と酒を買い溜めし、録画していたバラエティを垂れ流しながら、ひたすらダラダラと時間を潰した。

ソファの上で寝落ちして、目が覚めたらまたうたた寝。

二度寝、三度寝、意味のないネットサーフィン。

“最高に怠惰な一日”──それこそが、安見手にとって理想の祝日だった。


夜。

部屋の照明を消し、枕元の“エターナル・トゥデイ”に手を置く。

「……明日から、また仕事か……」

彼はそう呟いて、天井を見つめた。

カレンダーを見れば、今日も「5月6日」。

明日にはついに「5月7日」を迎え、仕事が始まってしまう。

「……でも、もう一回くらいなら、大丈夫だよな?」

そう思った瞬間、頭の奥で声が響いた。

──「あと1回ですよ。くれぐれも」

温泉での、あの静かな忠告。

笑顔の奥にあった、妙な“本気”の眼差し。

……それが脳裏をよぎったが、安見手はすぐに打ち消した。

「大げさだよ、きっと。夢だろ? ダメ元でチャレンジだ……」

言い訳のように呟きながら、

彼はそっと、枕に頭を乗せた。

そして、眠った。

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