うつから心理学④:愛情欲求を満たすべし!マズローの欲求5段階説
前回、病みの元凶!歪んだ認知ベイシック・ミステイクスについて論じたが、今回は心理学者マズローが唱えた欲求5段階説について論じたい。
マズローの欲求5段階説
心理学者・アブラハム・マズロー(1908年~1970年/アメリカ)は、人間の欲求を5段階の階層に分けられると考え、提唱した。下記のピラミッド型に描かれた図を見て欲しい。
図に描かれているように、マズロー人間の欲求を5段階に分けたのである。
では、なぜピラミッド型なのか。
これは、下の欲求程満たされやすく、上の欲求程満たされにくいことを示している。そして、上の欲求を満たすためには、まず下の欲求を満たすことが必要不可欠であると唱えている。
では、この5つの欲求が具体的にどんなものなのか、下から順に見ていこう。
①生理的欲求
生理的欲求とは、生きる上で必要な最低限度の欲求である。
睡眠欲や食欲といったところが代表的なところだろうか。
生理的欲求とは、基本的に満たされないと死ぬ欲求だと思ってかまわない。
飢餓状態な人間は、「何か食べたい。飲みたい。」という食欲が、何よりも最優先すべき欲求であり、この状態において他の欲求は沸かないのである。
同様に、寝不足が続いている人間は、「寝たい。」という睡眠欲が最優先される。
「朝ゆっくり寝たいから仕事辞めた。」こんな理由も、このマズローの欲求5段階説に基づけば、別におかしいことではないのである。
うつ病の人間は、大多数が睡眠障害を患っているが、よく寝たきりになるのはこの為である。「寝る」欲求を最優先に満たしているのだ。
②安全欲求
①の生理的欲求が満たされると、次に安全欲求を人は満たそうとする。
安全欲求とは、名の通り安全に暮らす欲求である。
裏を返せば、満たされないと危険な状態に陥る欲求である。
安全に暮らすとはなにか。
家があり、寝床がある。これは寒さや暑さから身を安全に守ることだ。
害虫や獣、犯罪者などから安全に身を守るということも含まれる。
また、DVや虐待など、家庭内暴力から身を守るということも含まれるだろう。こう考えると、昨今話題の虐待ニュースは、深刻に考えるべき問題なのだ。子供の場合、①の生理的欲求も満たされていない可能性もあり、非常に危険と言えよう。
③愛情欲求
人間は、①生理的欲求と②安全欲求が満たされると、今度は愛情欲求を満たそうと求める。
愛情欲求は、社会的欲求とも呼ばれる。
その名の通り、人からの愛情を欲するのである。家族や恋人からの愛情はもちろん、友情も含まれる。例えば、失恋したりいじめられたりすると、この欲求は満たされなくなり、人は心を病んでしまうだろう。
また、社会的欲求ともいうように、集団や社会に属すことでもこの欲求は満たされる。例えば会社をクビになった人間が、最も辛いのは、お金の問題も大きいが、
この愛情欲求(社会的欲求)が満たされなくなったということではないだろうか。
つまりこの愛情欲求と言うものは、満たされていたものが壊れれば、自殺の引き金にもなり得る欲求といえる。昨今話題の孤独死問題も、実はこの愛情欲求が満たされていれば発生が少ないのではなかろうか。
また、うつになる人間もこの愛情欲求の欠如からなる人間が多いのではと推測している。
④承認欲求
ここまでの欲求が満たされると、承認欲求が芽生える。
承認欲求とは、他者から認められたい、尊敬されたい、注目を浴びたいなど、満たされなくとも大きな支障がない欲求だといえる。
先日述べたバイトテロなど、現代のSNS時代の中で最も顕著に現れてきた欲求ではないだろうか。
ポジティブな側面で捉えれば、頑張る為の動機にもなりえる。
しかし、ネガティブな側面で捉えれば、誰かや何かを蹴落として自分を認めさせるといった、悪い動機にもなる。
良いor悪い行いの動機になり得る欲求だといえる。
⑤自己実現欲求
人間が最後に思い求める欲求。それこそが自己実現欲求だ。
自己実現とは一言で言い換えれば、”夢”、”理想”。
この欲求を叶えられる人間は、ほんの一握りだ。
いわゆる”成功者”や理想の自分になる為の欲求だといえる。
あらゆる困難を越えて、あるいは類稀な才能、幸運も必要だろう。
努力だけではなく、才能や運も関係してくるので、万人にとっては望むだけでこの欲求を目指すことは難しい。
むしろここまでの欲求を満たした人間は、何も求めるのか。自己実現の先に、何を望むのか。
頂に登り詰めたその先に、第六の欲求のようなものは存在するのか。何なのかが私は知りたいものだ。
それとも”夢”や”理想”を叶えた後も、新たな”夢”や”理想”が出てくるのか。非常に興味深い。
いかがだったであろうか。
このマズローの欲求5段階説の中でも、①~③は満たしておかないと心が病んでしまう鬱と深い関係のある欲求だと知っておいて欲しい。
とくに③愛情欲求について、積極的に人と出会い関わり、新たな人間関係を築くことが重要なのかもしれない。