殺意に満ちた突然の予期せぬ訪問者顔を確かめようとした瞬間、銀髪の少女はポケットから何かを取り出したと思ったら、左胸が僕と同じハートマークが光り、勢いよく何かを飛ばしてきた。
少女の放ったそれらは、僕が今しがた咄嗟に作ったバリケードを一瞬で蜂の巣にした。
本能が語りかける、”逃げろ”と。
考えるよりも先に、僕はベランダから飛び降り、駐車場に止まっている車を瞬間移動させ、踏み台にしながら地上へと降りた。
何とか地上に到達し、僕の部屋のベランダを確認すると、あの銀髪の少女がこちらを睨みつけていた。
そしてこちらに向けて、またポケットから何かを取り出し投げつけてきた。
僕は咄嗟に自動販売機を瞬間移動させ、バリケードを作りそれらを防いだ。
ものの数秒で破壊されたが、彼女がまた何かをポケットから取り出すまでの僅かな時間を稼ぐことができたので、その隙に全力で走った。
その後何回かは、彼女も同じ攻撃をしかけてきたが、僕はその度に車やバイクなどを瞬間移動させ防いだ。
彼女の投げたものを拾うと、何の変哲もない”パチンコ玉”だった。
攻撃が止んだのを確認し、僕はタクシーを捕まえ隣町まで逃走した。
隣町(あの涼風相談所がある繁華街だ)に着くと、僕は取り合えずお金もないので駅前の漫画喫茶に泊まることにした。
突然の事態に緊張で喉がカラカラだった僕は、飲み物で口の中を潤したく、ドリンクバーを取りに行った。
すると見覚えのある顔がそこにはあった。
藤宮莉璃だった。
聞けば、彼女は現在絶賛家出中で、ここしばらくこの店に滞在しているという。
僕は事の経緯を話すか迷ったが、彼女には同じ異能力者ということで勝手に親近感を感じており、全て話した。
藤宮莉璃の言うとおり、銀髪の少女の異能力はこと攻撃においては強力だ。何よりも飛び道具を使えることが、戦闘において大きなアドバンテージとなる。それに対し、僕の”物体瞬間移動”は至近距離ならまだしも、遠距離の攻撃に対しては防御することが関の山だ。
言いかけて、僕はやめた。死にたいと思っていたくせに、自殺志願者だったくせに、今さら生に縋りつくなんて矛盾している。
いっそ銀髪の少女に殺されても良いか、と思ってしまったのであった。
そう言って僕は個室に戻ると、目を閉じ逃亡で疲れた身体を休ませた。