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歌詞から妄想ストーリー:アンパンマンのマーチ

「おい!とっととアンパン買って来いよオラァァ!」
今日も僕はクラスの不良グループにパシりをやらされていた。

何をされても反抗せず、ただヘラヘラと笑っている僕は、生まれてこの方ずーっといじめられている。

そんな僕がこの高校へ転校してきた当初は、別のクラスメイトがいじめられていた。
彼の家は貧乏で、制服や体操服は兄弟のおさがり。
いつも靴はボロボロでお弁当も質素だった。

それ故彼はいじめられていたのかもしれない。
僕がいじめに気づいたのは、ある日のトイレでの光景を見てからだ。

「このバイキン野郎、汚ねえんだよ!」

いじめグループは彼にバケツで水をかけたり、モップで殴ったり、果ては彼の顔面を便器に突っ込んで笑っていた。

「何見てんだよ転校生!チクんじゃねえぞ?」

僕に気づいた彼らは、彼と僕を睨みつけながらトイレから出て行った。

「あの…大丈夫?」

僕は恐る恐る倒れている彼に話しかけた。
すると彼は笑顔でこう答えた。

「どうってことないさ、それより俺なんかと話してるとこあいつらに見られたらお前までいじめられるからやめときな。」

そう言って彼は立ち上がり、何事もなかったかのように教室へと帰っていった。

それからもいじめは続いていった。
そして誰も彼を助けようとはしなかった。

けれども僕は、彼のことが気になってある日話しかけてみた。

「何でずーっと何もやり返さないの?」

「何でって、問題起こしたら退学になるかも知れないだろ。」

「じゃあ転校するって道だってあるじゃないか!」

「転校も金かかるし、兄貴のおさがりがあるこの高校の方が色々節約できるんだよ。」

「それに──」

彼は続けて話した。

「高校卒業したら、すぐに働き始めて母さんに楽させてやりたいんだ。本当は今でも苦しい家計なんだけど、高校くらいは出とけってうるさくてさ。母さん、女手一つで朝から晩まで俺らの為に働きっぱなしで、少しも自分の人生楽しめてなくてさ。」

「そうなんだ。。そう言えば君の兄さんは何してるの?」

すると彼は顔を暗めて呟いた。

「高校卒業後、すぐ事故に遭って亡くなったよ。今は母さんと二人暮らしさ。」

その時、例の不良グループがこちらに向かってきた。

「お?なにお前ら?へぇ~、仲良いじゃん。」

「こんなバイキン野郎と話すなんて、お前も殺菌されたいの?」

「やめろよ、彼は関係な・・」

僕を庇おうとした彼は、思いっきり顔面を殴られた。

「誰に向かって口ごたえしてんの?」

「ちょうどこいつだけじゃ飽きてきたところだし、お前も今日からかわいがってやんよ転校生君。」

それから僕は、彼とともに不良たちからのいじめのターゲットとなった。

しばらくして、彼は学校を休んだ。
噂によると、彼の母親が脳卒中で倒れたとの事だった。
僕は心配になって、彼の母親が入院しているという病院へと向かった。

病室に入ると、彼は呼吸器を付け意識不明の状態で寝ている母親の前で、涙を流していた。
僕はかける言葉が見当たらず、黙って花束を置き立ち去ろうとした。
すると彼は、部屋を出る僕に向かってこう呟いた。

「俺さ、この先どうしたらいいんだろう。何の為に生まれて、何をして生きればいいのか、わからなくて。

一週間後、彼の母親は息を引き取った。

翌日、彼は登校しクラスメイトへ別れを告げにきた。
学校を辞めることにしたのだという。

その帰り、例の不良グループが彼に絡んできた。

「おいバイキン野郎、お前のお袋死んだんだって?」

「バイキンが繁殖したんじゃね?いつも汚ねえから自業自得じゃねえか。」

「お前も早く死ねよっっ」

その時、今まで何を言われても平気な顔をしていた彼が、阿修羅のような顔つきに変わった。
彼は無言で不良グループに殴りかかって行った。

僕は隣で見ていることしか出来なかった。

「てめぇ、あんま調子のんなよ!」

不良グループの一人がナイフを取り出し、彼の心臓へと突き刺した。
彼は、血だらけになりその場へ倒れた。

「おい、さすがにやべえよ!とっとと逃げるぞ!」

不良グループは一目散に逃げていった。
僕はパニックになり彼の元へと駆けつけた。

「いま、救急車呼ぶから!しっかりして!!」

20分後、救急車が駆けつけたときには既に手遅れで、
彼は息を引き取った。

その翌日、僕は電車へと飛び込んだ。

ずたずたに引き裂かれた身体は、全身の骨が砕け、もはや生涯自分で動くことは出来ないだろうと思っていた。

顔もぐちゃぐちゃで、もはや誰なのかわからないくらいに変形していた。

次に目が覚めたとき、見知らぬ部屋で寝ていた。
すると見覚えのない白衣の男が傍らに立っており、僕に語りかけた。

「目覚めたか、今日からお前は生まれ変わった。これからは死にたいなんて思わないくらい生きる喜びを感じさせてやろう。」

質問したいことは山ほどあったが、何ともいえぬ違和感を全身に感じた。

目を向けると、僕は唖然とした。
以前とは変わり果てた機会混じりの身体に改造されていた。

「なに…これ…」

「命をつなぐために処置してやったのだ。あれだけの事故で死ななかったんだ、嬉しいだろ?」

傍らにおいてあった鏡をみて、更に唖然とした。
顔までも僕は改造されていたのだ。

「お前は最強の戦死として生まれ変わったのだ。早速だがお前には働いてもらうぞ。いけ!我々の夢を守るために。」

こうして僕は、殺戮マシーンへと変わり果てたのだった。
白衣の男が告げたように、今では殺戮を嬉しく思い、生きる喜びさえ感じている。

あの日愛と勇気に満ちた友達を亡くした僕は、胸の傷が痛んで腐り、壊れてしまったのかもしれない。

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