突然訪れた二人の”印持ち“に、私は過去の事件について話すことにした。
妹は大学生で、私と一緒に暮らしていました。
その日は、大学の友人と卒業パーティがあるとのことで、帰りが遅くなると連絡をもらっていました。
私は震えながら、忌々しいその日の記憶を思い返した。
そこで改めて妹に電話をかけて見たのですが、やはり出ません。
妹はドジなところがあるので、忘れていったのかと思い、会場の中に入っていきました。
中に入ると…
そこまで話すと、私は不意に涙が溢れて来た。
あの時の光景を思い出すだけで今でも悲しみが止まらなかった。
話を聞いている”印持ち”の二人も困惑していた。
嫌な予感がしました。鳴り響く携帯電話の方へ向かっていくと…。
既に息はなく、何かで体中を貫かれた痕が残っておりました。
そして、最後の力を振り絞って書いたであろう例のハートマークが血文字で書かれておりました。
ハートマークが妹さんのダイニングメッセージ…ですか。
その事件、ニュースにもなった日本随一の名門・秀頂大学での惨劇のことですよね。
とても辛い思いをされたんですね。
なのに痕跡は確認できず、犯人はまだ捕まっていないとか…。
それで犯人につながる新たな手がかりを探していて、例のハートマークを載せることで、なにか事件のことについて知ることが出来ないかと思ったわけです。もちろん採用活動も嘘ではないですよ。
そう言うと、二人は自身に印されたハートマークの成り行きを全て話してくれた。
本当は誰にも話したくないであろう自殺未遂の話、そして黒衣の少女から譲り受けた各々の異能力と、1年後にはこの世にいないということを。
沖波はそう言うと、胸のハートマークが光り輝き、キッチンのガス台に置いてあったやかんを瞬時に自らの手に移動させて見せた。
藤宮は立ち上がると、同じく胸のハートマークが光輝き、一瞬消え、次の瞬間には部屋の一番奥にある私のデスクの椅子へと座ってみせた。
でも今のではっきりしました。例えば同じように異能力を使える者だったら、あの事件は犯行可能だということが。
見せていただきありがとうございます。
しかしこの能力、まだまだ自分でも慣れませんし僕は戸惑ってます。
私も死のうとしていたもんで、急にこんな能力をもらっても使い道がわからずアハハ。
あの惨劇を、繰り返させることは決してさせません。
私はこの国から悪を殲滅します。
僕達に殺人の片棒を担げと言うのですか?
悪を根絶やしにしたら全ての責任は、裁きは私が受けます。
とんだ偽善者だよ。殺人鬼じゃないか。
それに一度根絶やしにしたからといって、また時間が経てば悪人は現れると思います。
気が変わったらいつでも言ってください。
二人は部屋を後にした。
正直、戦力としては是非とも欲しい人材であったが、本人たちが拒むのであれば仕方がない。
いずれまた出会うようなそんな予感を感じていた。