前編に続き、実際にあった事件をベースに作られた日本の映画・ドラマを紹介する後編。
今回は、家族の問題や企業犯罪、社会的な闇を描いた深みのある15作品(16〜30)をお届けします。
ただのエンタメだと思っていた映画やドラマも、現実を知ると一層心に刺さる――。
それでは、後編も「元ネタ」と一緒にじっくり味わってみてください。

16. 『罪の声』(著:塩田武士/2016年)
- 作品のあらすじ
新聞記者・阿久津は、昭和最大の未解決事件「ギンガ・萬堂事件」の真相を追っていた。一方で、京都のテーラー店を営む曽根は、ある日自宅で見つけたカセットテープに、自分の“子どもの声”が使われていることを知る。事件に巻き込まれていた“もう一つの被害者”の存在が、静かに語られ始める。 - 元となった事件・背景
1984〜1985年にかけて発生した「グリコ・森永事件」をモチーフにしたフィクション。企業への脅迫、毒入り食品、挑戦的な声明文、そして未解決の犯人「かい人21面相」。当時の日本を震撼させたこの事件に着想を得て、現代的なテーマで再構成された社会派ミステリー。


DMM TV
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=mpwt783e0jkk2oj3v0jh0xufp
17. 『愛なき森で叫べ』(監督:園子温/2019年)
- 作品のあらすじ
カリスマ性を持つ男・村田は、映画を撮りたいという若者たちに接近。次第にその支配は精神をも蝕み、彼らの人間関係を狂わせていく。詐欺、洗脳、暴力、性――。表向きは善人に見えるその男の裏には、底知れぬ闇があった。美しくもグロテスクな狂気が渦巻く、実話ベースの衝撃作。 - 元となった事件・背景
2002年に発覚した「北九州監禁殺人事件」がベース。松永太とその内縁の妻が、複数人を監禁し、洗脳・暴力・虐待を繰り返し、最終的には殺人・死体遺棄に至った凄惨な事件。精神支配によって“家族に家族を殺させた”ともいわれる極めて異常な構造が注目された。園子温監督はこの事件を題材に、“言葉で人間を殺す”ことの怖さを描いている。
NETFLIX
https://www.netflix.com/jp/title/81133621
18. 『葛城事件』(監督:赤堀雅秋/2016年)
- 作品のあらすじ
暴力的で独裁的な父・清。彼の家庭で育った次男・稔は、やがて無差別殺人事件を起こし、死刑囚となる。事件後、葛城家はマスコミと世間の目にさらされ、家族は分裂し、崩壊していく。「なぜ殺したか」ではなく、「なぜそう育ってしまったか」を問う、静かで重たい家族の物語。 - 元となった事件・背景
2008年に秋葉原で起きた「無差別通り魔事件」に着想を得て制作。トラックで歩行者天国に突入し、その後ナイフで通行人を襲った加藤智大容疑者の事件は、社会に衝撃を与えた。事件の背景には家庭内の抑圧や孤立、ネット社会との関係が指摘され、映画は「家族」の視点からこの事件の根に迫る。

U-NEXT
https://www.video.unext.jp/title/SID0027755/c_txt=b
19. 『ヘヴンズ ストーリー』(監督:瀬々敬久/2010年)
- 作品のあらすじ
家族を殺された少女・サトが出会ったのは、殺人犯の息子・トモキ。彼らはやがて、“復讐”という名の正義を信じて行動を共にする。全編4時間38分におよぶ壮大な群像劇の中で、被害者・加害者・その家族たちの交錯する運命と、生きる意味が静かに、深く問われていく。 - 元となった事件・背景
複数の実在事件から着想を得ているが、特に影響が大きいのは1997年の「神戸連続児童殺傷事件」。14歳の少年によって小学生が殺害されたこの事件では、加害者が未成年であること、異常な供述、メディア報道の過熱などが強く問題視された。映画では、こうした“罪と家族”の連鎖に焦点が当てられている。

Hulu
https://www.hulu.jp/heavens-story?detail=open
20. 『友罪』(著:薬丸岳/2013年)
- 作品のあらすじ
とある町工場で働き始めた益田は、無口で人付き合いの苦手な同僚・鈴木と出会う。少しずつ友情を深めるが、ある日、益田は鈴木の過去に関する衝撃的な事実に気づく。彼は、かつて少年犯罪史に残る凶悪事件を起こした少年Aなのではないか――。過去の罪と現在の関係性を深く描く社会派ドラマ。 - 元となった事件・背景
1997年に神戸市で発生した「神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)」。14歳の少年が小学生を殺害し、世間に大きな衝撃を与えた事件。映画はこの事件の加害者少年をモデルに、「罪を犯した人間が社会復帰できるのか」「周囲はそれを受け入れられるのか」といった難しいテーマに真正面から挑んでいる。


DMM TV
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=bgjkvj29kbztb3quap13bnyy2
21. 『死刑にいたる病』(著:櫛木 理宇/2017年)
- 作品のあらすじ
パン屋を営む榛村は、多数の若者を殺害した連続殺人犯として逮捕され、死刑判決を受ける。彼はある日、一通の手紙を送り、大学生・雅也に「自分は無実だ」と告げ、冤罪の可能性を示唆する。雅也は事件を追い始めるが、やがて榛村の底知れぬ闇に巻き込まれていく――。 - 元となった事件・背景
2017年に神奈川県座間市で発生した「座間9人殺害事件」。SNSで知り合った男女9人を殺害・遺棄した猟奇的な事件で、社会に大きな衝撃を与えた。映画は、事件の詳細や犯人の心理状態を参考にしつつ、犯人の歪んだ心理や社会の孤独をリアルに表現したサイコサスペンスとして評価された。
※原作2015年『チェインドッグ』から改題

NETFLIX
https://www.netflix.com/jp/title/81692428
22. 『それでもボクはやってない』(監督:周防正行/2007年)
- 作品のあらすじ
満員電車で痴漢と間違われた青年。彼は無実を主張するが、警察や司法は「疑われた以上、無罪を証明しなければ有罪」と彼を追い詰める。やがて青年は裁判に挑むが、そこには真実よりも「体裁」「前例」「社会的圧力」を重視する日本の司法制度の壁が立ちはだかる――。冤罪問題を真正面から扱った社会派ドラマ。 - 元となった事件・背景
周防監督は実際に起きた多数の痴漢冤罪事件を丁寧に取材し、司法関係者、弁護士、被害者・被疑者双方へのインタビューを通して脚本を構築した。特に、冤罪事件での「疑われた者が無罪を証明する難しさ」「一度疑われたら有罪が確定しやすい日本の司法の問題」をリアルに再現。公開後は司法関係者の間でも大きな議論を巻き起こした。


UーNEXT
https://video.unext.jp/title/SID0013164
23. 『罪とか罰とか』(監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/2009年)
- 作品のあらすじ
カリスマモデルのアヤカは、ひょんなことから犯人逮捕の「一日署長」をすることに。だがその裏では、ある女性が何者かに殺され、事件の真相はやがて彼女自身の身辺に迫っていく。メディアと正義、自己責任と他人事――。社会に流れる空気を風刺的に切り取った異色のブラックコメディ。 - 元となった事件・背景
明確に言及されてはいないが、2000年代初頭に起きた「女子アナウンサー殺害事件」や「ブログでの殺害予告事件」を下敷きにしているとされる。犯人逮捕やSNSの過熱、無責任な正義感が人を追い詰めていく様子など、現実と地続きのテーマが色濃い。

24. 『八日目の蝉』(著:角田光代/2007年)
- 作品のあらすじ
不倫相手の子どもを誘拐し、自分の娘として4年間育てた女性。逃亡と育児の日々、母と娘のような絆、だがすべては奪われた“他人の子”。やがて逮捕され、成長した娘は過去と向き合う旅に出る。罪とは何か。育てることと産むことの違いとは。重く切ない愛と喪失の物語。 - 元となった事件・背景
1995年、東京都で起きた「赤ちゃん誘拐事件」が着想のきっかけ。病院で誘拐された乳児を、犯人の女性が自分の子として育てていたという実際の事件が報道された。映画では事件の経緯に加え、「誘拐された側」と「育てた側」のそれぞれの視点を描くことで、事件の複雑さを掘り下げている。


DMM TV
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=sv51agkvs9u8z5j8i1hh5a5oy
25. 『さよなら渓谷』(著:吉田修一/2008年)
- 作品のあらすじ
静かな渓谷の街で幼児殺害事件が発生。事件をきっかけに、隣家に住む尾崎夫妻が疑惑の目を向けられる。やがて、夫婦には過去に隠された罪があることが判明。被害者と加害者という複雑な関係性を持つ夫婦が、「憎しみ」「愛」「許し」といった感情の狭間で揺れる様子を描く人間ドラマ。 - 元となった事件・背景
1998年の帝京大学ラグビー部集団レイプ事件含め、複数の実在事件を着想元としている。犯罪者家族に対する社会的な偏見、加害者と被害者が共存することの難しさ、そして「罪を許す」というテーマを深く掘り下げて描いている。

Hulu
https://www.hulu.jp/the-ravine-of-goodbye
26. 『空白』(監督:吉田恵輔/2021年)
- 作品のあらすじ
スーパーで万引きを疑われ逃走した女子中学生が事故死する事件が発生。父親は娘の名誉回復のためにスーパーを激しく責め立て、スーパーの店長は社会的な非難にさらされる。事件はやがてメディアを巻き込み、当事者たちの人生を大きく狂わせていく――。社会やメディアによる「正義」が暴走する様子を描く衝撃の人間ドラマ。 - 元となった事件・背景
具体的に特定の事件を直接モデルにしているわけではないが、実際に日本国内で報道された複数の「万引き疑惑による追跡・事故死亡事件」を参考にしている。社会やメディアが安易に人を裁くことの恐ろしさ、そしてその影響で崩壊していく人間の心を描いた作品として高い評価を得た。

NETFLIX
https://www.netflix.com/jp/title/81553086
27. 『沈まぬ太陽』(著:山崎豊子/1999年)
(ドラマ版)
- 作品のあらすじ
航空会社の労働組合委員長として闘い続け、報復人事で世界中を飛び回らされる恩地元。やがて日航機墜落事故が発生し、企業の腐敗と政治の癒着に対峙することとなる。巨大組織と個人の戦いを、真っ向から描いた社会派エンターテインメント。 - 元となった事件・背景
1985年に起きた「日本航空123便墜落事故」が背景。520人が犠牲となった航空史上最悪の事故の影で、企業体質・労組と経営陣の対立・責任の所在などが深く問われた。山崎豊子による原作小説は、日航社員や遺族たちへの綿密な取材を基に執筆されており、映画もそれを忠実に再現。

Hulu(ドラマ版)
https://www.hulu.jp/the-unbroken
Hulu(映画版)
https://www.hulu.jp/the-unbroken-film
28. 『空飛ぶタイヤ』(著:池井戸潤/2006年)
(映画版)
- 作品のあらすじ
走行中のトラックからタイヤが外れ、歩行者が死亡。整備不良とされた運送会社社長・赤松は、自社に過失がないことを信じ、タイヤの製造元である大手自動車会社・ホープ自動車に調査を申し入れる。だが大企業の壁は高く、真実は巧妙に隠されていた――。信念を武器に、弱者が巨悪に立ち向かう感動の物語。 - 元となった事件・背景
2002年、三菱ふそう製の大型トラックのタイヤ脱落事故が実際に発生。女性が犠牲になり、その後の調査で製造側のリコール隠しが明らかに。これにより三菱ふそうは記者会見と謝罪に追い込まれた。池井戸潤の同名小説を原作とした本作は、事故当時の報道と企業内部告発をリアルに反映している。

Hulu(映画版)
Hulu(ドラマ版)
https://www.hulu.jp/the-flying-tire
29. 『64-ロクヨン- 前編/後編』(著:横山秀夫/2012年)
(映画版)
- 作品のあらすじ
わずか7日間で幕を閉じた昭和64年に起きた未解決の少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」。事件から14年後、広報官として警察組織の中で苦悩する三上は、事件を再捜査する中で隠された真実や警察内部の闇に直面する。複雑な人間模様と謎が絡み合い、真相へと導かれていく社会派ミステリー。 - 元となった事件・背景
明確なモデルは1987年に起きた「群馬・功明ちゃん誘拐殺人事件」。実際の誘拐事件を取材した横山秀夫による同名小説が原作で、警察内の権力争いや組織的隠蔽体質をリアルに描写している。当時の捜査の混乱やメディアとの対立を忠実に再現し、高い評価を得た。


DMMTV(映画版)
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=g0pz2h9a20dddc9seg1buttmm
U-NEXT(ドラマ版)
https://video.unext.jp/title/SID0025043
30. 『楽園』(吉田修一/2016年)
- 作品のあらすじ
ある田舎町で少女が行方不明になる事件が発生。その事件をきっかけに孤立した青年が犯人として疑われ、街は狂気の渦に巻き込まれる。閉鎖的なコミュニティで生まれる噂や疑惑が、人間の心を歪ませていく様子を描いた衝撃のサスペンス。 - 元となった事件・背景
2005年に栃木県今市市(現日光市)で起きた「今市事件」をモデルとしている。少女が下校途中に行方不明となり、後に遺体で発見された実際の事件。犯人逮捕まで10年近くかかったこの事件をベースに、人間の孤立や疑惑が地域社会にもたらす影響をリアルに掘り下げて描いた。
※原作は、短編小説集『犯罪小説集』収録「青田Y字路」「万屋善次郎」

Hulu
全30作品を通じて、「フィクションの裏側にある現実」を見てきました。
作品の中にあるリアリティは、単なる創作ではなく、実際の事件の悲しみや教訓を映し出しています。
この記事が、映画やドラマを通じて、あなたが社会や事件について考える小さなきっかけになれば嬉しいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
