Mortals~死に損ないの英雄道~:第9話『逃亡』

Mortals~死に損ないの英雄道~:第9話『逃亡』
沖波
誰だお前は!

殺意に満ちた突然の予期せぬ訪問者顔を確かめようとした瞬間、銀髪の少女はポケットから何かを取り出したと思ったら、左胸が僕と同じハートマークが光り、勢いよく何かを飛ばしてきた。

少女の放ったそれらは、僕が今しがた咄嗟に作ったバリケードを一瞬で蜂の巣にした。

沖波
拳銃?いやマシンガンか?

本能が語りかける、”逃げろ”と。

考えるよりも先に、僕はベランダから飛び降り、駐車場に止まっている車を瞬間移動させ、踏み台にしながら地上へと降りた。

何とか地上に到達し、僕の部屋のベランダを確認すると、あの銀髪の少女がこちらを睨みつけていた。

そしてこちらに向けて、またポケットから何かを取り出し投げつけてきた。

僕は咄嗟に自動販売機を瞬間移動させ、バリケードを作りそれらを防いだ。

ものの数秒で破壊されたが、彼女がまた何かをポケットから取り出すまでの僅かな時間を稼ぐことができたので、その隙に全力で走った。

沖波
彼女、完全に僕を殺す気だ。。

その後何回かは、彼女も同じ攻撃をしかけてきたが、僕はその度に車やバイクなどを瞬間移動させ防いだ。

彼女の投げたものを拾うと、何の変哲もない”パチンコ玉”だった。

攻撃が止んだのを確認し、僕はタクシーを捕まえ隣町まで逃走した。

隣町(あの涼風相談所がある繁華街だ)に着くと、僕は取り合えずお金もないので駅前の漫画喫茶に泊まることにした。

突然の事態に緊張で喉がカラカラだった僕は、飲み物で口の中を潤したく、ドリンクバーを取りに行った。

すると見覚えのある顔がそこにはあった。

藤宮莉璃
あっ
沖波
あっ

藤宮莉璃だった。

聞けば、彼女は現在絶賛家出中で、ここしばらくこの店に滞在しているという。

藤宮莉璃
それで、沖波さんは何故ここに?

僕は事の経緯を話すか迷ったが、彼女には同じ異能力者ということで勝手に親近感を感じており、全て話した。

藤宮莉璃
なるほど、大変でしたね。それで心当たりはあるんですか?
沖波
彼女に襲われる直前、僕は一連の連続通り魔事件を調べていたんだ。そこである事に気付いて。
藤宮莉璃
あぁ、確か犯人がまだ捕まってない事件ですよね。それが今回の襲撃事件と関係があるんですか?
沖波
うん。被害者は全員、僕のかつてのクラスメイトだった。そして当時のことを思い出していたとき、あるクラスメイトがいじめで自殺した事を思い出したんだ。
藤宮莉璃
それは….悲しい事件があったんですね。
沖波
あぁ。その時自殺した子の名前と顔を思い出したよ。名は神崎明日奈。そして銀髪の彼女の顔を一瞬だけど見たとき、どこか似ていた気がしたんだ。
藤宮莉璃
それって…。まさか、その銀髪の少女は彼女の…。
沖波
うん。可能性は高いし、動機も十分だ。僕は神崎明日奈へのいじめに加担はしていなかったけど、助けることもせず、ただ傍観していた。通り魔の被害者たちをみると、いじめの主犯格はもちろん、傍観者も襲われていたから同罪なんだろうね。
藤宮莉璃
でも、今になって何故?15年も前の事なんでしょう?
沖波
それはわからない。でも一つ言えるのは、今の彼女は僕たちと同じ”印持ち”であり、殺戮出来る能力を手にしているということだ。
藤宮莉璃
パチンコ玉をまるでマシンガンのように放ってくるんですよね。。攻撃性に特化した危険な能力ですよね。

藤宮莉璃の言うとおり、銀髪の少女の異能力はこと攻撃においては強力だ。何よりも飛び道具を使えることが、戦闘において大きなアドバンテージとなる。それに対し、僕の”物体瞬間移動”は至近距離ならまだしも、遠距離の攻撃に対しては防御することが関の山だ。

沖波
とにかく、僕たち以外にも”印持ち”が存在していることがわかった。話しておいてなんだけど、君を巻き込みたくないから、この話は忘れてくれ。
藤宮莉璃
沖波さんは、これからどうするんですか?
沖波
朝になったらここを発つよ。今もあの銀髪の少女は僕を探しているだろうしね。いや、あるいは…

言いかけて、僕はやめた。死にたいと思っていたくせに、自殺志願者だったくせに、今さら生に縋りつくなんて矛盾している。

いっそ銀髪の少女に殺されても良いか、と思ってしまったのであった。

藤宮莉璃
私なら、その子を止められると思うんですけど!沖波さんには、助けられた恩もありますし、手伝いますよ?
沖波
ありがとう。でもいいんだ、これは僕の過去の話だからね。

そう言って僕は個室に戻ると、目を閉じ逃亡で疲れた身体を休ませた。

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