Mortals~死に損ないの英雄道~:第7話『狂った正義』

Mortals~死に損ないの英雄道~:第7話『狂った正義』

突然訪れた二人の”印持ち“に、私は過去の事件について話すことにした。

涼風七楓
あれは1ヶ月程前のこと。

妹は大学生で、私と一緒に暮らしていました。

その日は、大学の友人と卒業パーティがあるとのことで、帰りが遅くなると連絡をもらっていました。

私は震えながら、忌々しいその日の記憶を思い返した。

涼風七楓
パーティが終わる時間は事前に聞いていたのですが、時間になっても妹からの連絡はなく、飲み過ぎてしまったのかと思い迎えに行こうと車を出しました。
涼風七楓
会場に着くと、やけに静かだと思いましたが、パーティも終わって解散、あるいは二次会にでも移動したのだと推察しておりました。

そこで改めて妹に電話をかけて見たのですが、やはり出ません。

涼風七楓
しかし耳をすませて見ると、会場の中から着信音が鳴り響いているのが聞こえました。

妹はドジなところがあるので、忘れていったのかと思い、会場の中に入っていきました。

中に入ると…

そこまで話すと、私は不意に涙が溢れて来た。

あの時の光景を思い出すだけで今でも悲しみが止まらなかった。

話を聞いている”印持ち”の二人も困惑していた。

涼風七楓
失礼しました取り乱しました。中に入ると、そこは血の海。いくつもの死体が転がっておりました…。

嫌な予感がしました。鳴り響く携帯電話の方へ向かっていくと…。

涼風七楓
…そこに血だらけの妹が倒れていました。

既に息はなく、何かで体中を貫かれた痕が残っておりました。

そして、最後の力を振り絞って書いたであろう例のハートマークが血文字で書かれておりました。

藤宮莉璃
そういう事情だったんですね…。

ハートマークが妹さんのダイニングメッセージ…ですか。

その事件、ニュースにもなった日本随一の名門・秀頂大学での惨劇のことですよね。

とても辛い思いをされたんですね。

沖波
僕もニュースで見ました。死者数30名をも出した、近年で稀に見る大量殺人事件。

なのに痕跡は確認できず、犯人はまだ捕まっていないとか…。

涼風七楓
ええ、私も自分なりに捜査はしていましたが、やはり手がかりとなるのは妹が残したハートマークのみでした。

それで犯人につながる新たな手がかりを探していて、例のハートマークを載せることで、なにか事件のことについて知ることが出来ないかと思ったわけです。もちろん採用活動も嘘ではないですよ。

沖波
残念ながら事件のことについては何も知りませんが、このハートの入墨について、僕が知っていることをすべてお話しますよ。
藤宮莉璃
私もお話します!

そう言うと、二人は自身に印されたハートマークの成り行きを全て話してくれた。

本当は誰にも話したくないであろう自殺未遂の話、そして黒衣の少女から譲り受けた各々の異能力と、1年後にはこの世にいないということを。

涼風七楓
お二人共、ありがとうございます。異能力..俄には信じられないのですが、そんな不思議な力が宿っているのですね。
沖波
実演します。僕の手元をよく見ててくださいね。

沖波はそう言うと、胸のハートマークが光り輝き、キッチンのガス台に置いてあったやかんを瞬時に自らの手に移動させて見せた。

涼風七楓
すごい…こんなことって…
藤宮莉璃
じゃあ私も。

藤宮は立ち上がると、同じく胸のハートマークが光輝き、一瞬消え、次の瞬間には部屋の一番奥にある私のデスクの椅子へと座ってみせた。

涼風七楓
信じられない…
沖波
あれ、僕の能力より使い勝手が良さそう!
涼風七楓
お二人共、素晴らしい能力をお持ちですね。驚きを隠せません。

でも今のではっきりしました。例えば同じように異能力を使える者だったら、あの事件は犯行可能だということが。

見せていただきありがとうございます。

沖波
そうですね、その可能性が高い。能力使用時にハートマークが光輝くので、妹さんは殺される直前、見たのかも知れませんね。

しかしこの能力、まだまだ自分でも慣れませんし僕は戸惑ってます。

藤宮莉璃
色んな異能力がありそうですもんね。

私も死のうとしていたもんで、急にこんな能力をもらっても使い道がわからずアハハ。

涼風七楓
なら是非、ウチでその能力発揮していただけませんか?
沖波
お悩み相談所にこんな能力必要ですか!?
涼風七楓
その件につきまして説明が遅れました。たしかに表向き本所は相談所ですが、その実、悪しきを滅する活動を行っています。
藤宮莉璃
悪しきを滅する…正義の味方!?ヒーロー?!
沖波
待ってください。滅するとは、つまり、壊滅させるということですか?殺すということですか?
涼風七楓
悪は、生かしてはおけません。

あの惨劇を、繰り返させることは決してさせません。

私はこの国から悪を殲滅します。

沖波
つまり悪人を抹殺するということですね。

僕達に殺人の片棒を担げと言うのですか?

涼風七楓
はい。

悪を根絶やしにしたら全ての責任は、裁きは私が受けます。

沖波
あんたおかしいよ。いくら妹が殺されたからって、世の中の悪人を全員殺そうだなんて。

とんだ偽善者だよ。殺人鬼じゃないか。

藤宮莉璃
私もそう思います。

それに一度根絶やしにしたからといって、また時間が経てば悪人は現れると思います。

涼風七楓
どうでしょう。少なくとも”抑止力“にはなると思います。
沖波
本気なんですね。もし僕たちが断ったら?
涼風七楓
構いません。特段あなた達を消すことはしませんよ。”印持ち”が何なのか、その情報をいただけたので、等価交換ということにしておきましょう。
沖波
そうですか。僕はめんどうなことに巻き込まれるのはごめんなんで、お断りさせていただきます。
藤宮莉璃
私もごめんなさい。
涼風七楓
わかりました。

気が変わったらいつでも言ってください。

二人は部屋を後にした。

正直、戦力としては是非とも欲しい人材であったが、本人たちが拒むのであれば仕方がない。

いずれまた出会うようなそんな予感を感じていた。

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